御蔵島は、黒潮がぶつかる断崖の上に広がる原生林から豊かな森の恵みが海に注ぎ込み、透明度の高い海底深くで堆積し、その海に豊かな生態系をもたらした。台風のシーズンには破格の大波が襲う海を畏れた島民は海にその糧を求めることをせず、イルカをはじめとする海洋生物とのおだやかな共存が保たれてきた。森には天然記念物の渡り鳥・オオミズナギドリも住みつき、樹齢数百年と推測されるシイや、ツゲが生い茂る。
「みらいじま」の体験プログラムは、2泊3日コースと3泊4日コースのいずれも毎日のドルフィン・スイムとともに、島内の自然環境、人的負荷の観察を行う。かつてはなかったペットボトルを焼却するためのゴミ処理施設を見学し、その異臭を体験した参加者が「ペットボトルは家に持ち帰る」と言い出したこともあったと言う。
プログラムは島に住むさまざまな方たちの協力なくしては実行できない。長く御蔵島で保たれてきた自然との共生スタイルを尊重して、プログラムにもさまざまなルールがある。
たとえばイルカにさわらない、というのも、そのひとつ。島に住む最大のほ乳類であるイルカにとって、最大の天敵は人間である。しかし、御蔵島の人々はイルカのいる海を慈しみ、必要以上の接近を封じてきた。だからイルカはドルフィン・スイムをする人間のすぐ近くにやってきてくれるのだ。
さて、「今、NPO法人みらいじまが抱える一番大きな課題は?」と聞いてみた。
「僕たちは、安全に参加者たちに自然体験を楽しんでもらうため、プログラムをサポートするスタッフの十分な編成が必要です。しかし皆仕事を抱えていて、そのローテーションには一番頭を悩ませています。来季は、さらに自然環境に関する知識やプログラム運営のスキルを確かなものにするため、冬季から定期的なレクチャーを実施(会場は東京・新宿区民センター)していく予定です。募集は12月、レクチャー開始は来年1月を予定しています」
シーズン中はキャンセル待ちの状態が続いている人気プログラム。思い切ってボランティアに挑戦してみてはいかがだろうか。
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天然記念物・オオミズナギドリも自然循環の重要な担い手 |
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